下地理則の研究室
執筆項目リストについて
記述文法執筆項目リストと記述のポイントを明示して,チェックリストのようにしてこれを使いながら記述を進めていくというアイデアは,下地(2013)(「危機方言研究における文法スケッチ」田窪行則編『琉球列島の言語と文化』所収)で示しているので,詳しくはそれを参照されたい。このアイデアは,国立国語研究所消滅危機方言プロジェクトで現在進行中の,消滅危機方言の3点セットの作成に関する共同研究の文法概説の作成のために利用されており,本サイトの執筆項目リストは,その電子版である。
この執筆項目リストは自由に使っていただいて構わないが,これを使用して成果を公表する場合は,本サイト及び国語研の上記共同研究へのacknowledgeを書くようにお願いしたい。
なお,九州大学の下地研究室では,基本的に修士課程で消滅危機方言の文法概説を書き,博士課程でその記述文法に発展させるという流れで指導しているが,具体的な方針として,学生はこのリストを使い,適宜言語実態に合わせて修正しながら修士論文や博士論文を作成している。その成果として,例えば占部由子(2018)「南琉球八重山語西表島船浮方言の文法概説」(九州大学大学院修士論文,全158ページ)がある。また,私が出版した下地(2018)『南琉球宮古語伊良部島方言』(東京:くろしお出版, 全368ページ)の章立ては,この執筆項目リストの元となったものであり,その意味で,執筆項目リストを使った記述文法の例として参照できる。
調査票について
執筆項目リストの各セクションをクリックすると,「記述のポイント」のページに行けるが,そこに,当該のセクションを記述するのに便利な調査票へのリンクがついていることがある。この調査票は,断りのない限り,上記の国語研の3点セット共同研究プロジェクトのために作成されたものである。下地,新永悠人氏(国語研),林由華氏(学振PD /国語研),原田走一郎氏(長崎大学),平子達也氏(駒澤大学)が作成を担当している。
これ以外に,以下のような,既存の研究プロジェクトや論考で公開されている調査票へのリンクを掲載している。既存の調査票は大変有用であるが,これまではバラバラの場所に格納されていて,方言研究者がいざ記述を行う際に,どのようなサイトにどのような調査票があるかが判然としないという問題があった。そこで,本サイトの執筆項目リストは,こうした既存の様々な調査票と,該当する調査項目を結びつけるポータルサイトのようになっている。
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東京外国語大学『語学研究所論集』は,ここ数年,受動表現,存在表現,といった類型論的観点からの「特集」が掲載されている。その「まえがき」(同大学教授の風間伸次郎先生のご執筆)は,通言語的な観点から,特集で扱う類型論的トピックの重要な点をまとめていて,しかもそれらの観点を踏まえた調査例文集を載せている。この論集はリポジトリで公開されている。
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Max Plank Institute for Evolutionary Anthropology(マックスプランク進化人類学研究所)の言語学セクションのサイトには,類型論的観点を踏まえた様々な調査票ないし記述のポイント(analytical questionnaire)が公開されている。
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大西拓一郎編(2002)『方言文法調査ガイドブック』のpdf版が,大西氏のサイトで公開されている。このガイドブックに収められている多数の,しかも方言研究の知見を踏まえた調査票は極めて有用である。