記述のポイント

ここでは,いわゆる文タイプ(sentence type)と言われる,平叙・疑問・命令の構文体系を記述する。これら3つのメジャーな構文に加えて,自問など,他の文タイプも適宜記述する。これら文タイプを担う述語の屈折形式や,文末助詞,その他構文特徴を記述する。なお,疑問語疑問文は,情報構造(12.12節)にも関係するので,適宜相互参照を行うか,記述する箇所を分けるなど,工夫する必要があるだろう。

​ 通方言的に区別される可能性の高い,主要な文タイプのパターンを概観するための簡単な調査票はこちらから。

真偽疑問文と疑問語疑問文

​​少なくとも以下の観点はおさえておく必要があるだろう。

  • ​真偽疑問文

    • ​真偽について不明で応答を求める疑問と,真偽について不明で応答を求めない自問(疑い),偽であることがわかっていて,応答を求めない反語(修辞疑問)で,構文特徴に違いがあるか。

    • 「〜か否か」のような,肯定+否定の疑問形式は存在するか。

    • 埋め込みの場合の構文特徴(どのような形式で埋め込むか;「かどうか」のような表現など)

  • 疑問語疑問文

    • 疑問,自問,反語で構文特徴に違いが出るか。

    • ​いわゆるmultiple WH(「誰が何を食べたの?」)は可能か。

    • 埋め込みの場合の構文特徴(どのような形式で埋め込むか;「か」のような表現など)

    • 述語の屈折形式が文終止ではない形式(例えば条件形式)になる方言が,特に四国中国地方(特によく知られるのは岡山方言)に散見される。

    • 擬似分裂文(例「食べたのは誰?」)は,全ての疑問語で可能か?

    • 上記にも関連する可能性があるが,理由を問う「なぜ」は,節(命題)を疑問にしている点で,他の疑問語と構文特徴が異なっている可能性がある。

  • ​真偽疑問文と疑問語疑問文の比較

    • ​疑問終助詞が2つで同じか異なるか。

    • 疑問イントネーションが2つで同じか異なるか。

命令文

  • 屈折形式としての命令形以外で命令の機能を表す動詞形式にはどのようなものがあるか。例えば標準語のテ形命令は言うに及ばず,方言によっては別の形式が命令機能に対応していることもある(例:宮崎県椎葉村方言などでは,条件形式-tanarjaa「〜したなら」が使われ,むしろ命令形よりも多用される)。

  • 命令形の敬語形式。これは動詞の屈折形態論(5.2節)で扱っても良い。

  • 命令形に対する禁止形は,命令形の否定形として規則的に作られるのか,特殊な形態素を使うのか(例:標準語の-na)。これも動詞の屈折形態論で扱っても良い。

  • 命令文特有のイントネーションはあるか。

  • 命令文特有の格フレームや取り立て標示の制限。例えば,琉球諸語では命令文において焦点助詞が使われない。

  • 命令文にしか出現しない終助詞はあるか。それは,命令形を使った命令文に固有か,それとも命令機能を持つ他の動詞形式の命令文でも出現可能か。

その他,命令文に関する類型論的観点からの記述のポイントはMax Plank研究所のTypological tools for field linguistsのページから。

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